SmartBank Research Culture Book

はじめに

組織でリサーチ活動を行い、ユーザー視点をメンバーに届けたい方へ

スマートバンクは、日本で一番小さなカード会社。Visaプリペイドカードと家計簿アプリがセットになった新しい家計管理サービス「B/43(ビーヨンサン)」を提供しています。

「人々が本当に欲しかったものをつくる」をパーパスに、創業者がユーザーとの対話を大事にしながらサービスを作ってきました。

そのバトンを引き継ぐかたちでリサーチャーが実務を担っています。これまで、一貫して「経営・事業の意思決定をリサーチを通じてサポートする」「ユーザー視点でチームメンバーの役に立つ」ことを実現しようと活動してきました。

このページは、toC向けのWebサービスの開発にリサーチャーとして関わる中で、大事にしてきたことや実際に行っていることを紹介しています。組織や扱うサービスによって、リサーチャーの在り方やフィットする方法は異なりますので、ちょっとしたヒントとして捉えていただけると幸いです。

スマートバンクがリサーチで大事にしていること

50名程度のメンバーで構成され、皆「B/43」のユーザーでもあります
メンバー全員がユーザー視点を感じて業務できるように心がけています

スマートバンクがリサーチで大事にする考え方

リサーチは、リサーチャーだけのものではない

伴走型リサーチ

調査の部分だけではなく企画の初期段階から参画し、設計部分もメンバーと共同で行う「点ではなく線で関わるリサーチ」を指します。リサーチの活用方法についても適宜アドバイスを行い、各職種に応じて適切なタイミングでユーザー視点の提供を通じて支援します。

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組織でリサーチをする理由

経営・開発の意思決定に役立つ

プロジェクトが前に進まない原因の1つは、情報不足で不確実性が高い状態だからと考えます。

リサーチャーは意思決定に役立つ情報を確実に収集し、提供する役割と責任を持ちます。経営の意思決定や開発プロセスにリサーチが組み込まれ「リサーチが組織で活用される」状態を目指しています。

ユーザーにまっすぐ向き合うチームで在り続ける

ユーザーに長期的に価値を提供し続けるため、思い込みのユーザーに対してプロダクトを提供する状態は避けるべきだと考えます。

リサーチャーは後工程で活用されるよう、適切に情報(ユーザー視点)を渡し、メンバーがリサーチャー同様の情報を持つ状態を作るよう努力しています。

💡経営者がリサーチャーに期待すること

CEO: shota

事業を伸ばす上でリサーチは必要不可欠

事業を作る上で意思決定に必要な情報をどう拾ってくるか。どれだけ深いインサイトと、リサーチの回数を作れるかが事業の基盤になると考えている。 これまで自らユーザーのイシューを深掘り、事業を作ってきた。そんな起業家である自分よりインサイトを深掘れるリサーチャーになかなか出会えなかったが、Harokaさんと会った時に「リサーチの型を持ち、そして深くやりきっている」ところが自分と合っていると感じた。

文化を強くすることに貢献してくれている

スマートバンクはインサイトをしっかり掘った上で、ユーザーが使ってくれるものを作る文化が強い。リサーチャーや経営者だけではなく、メンバー全員がリサーチするマインドを強く持って欲しいと思っている

これまで自分が属人的にやっていたリサーチの手法やノウハウが社内で型化されて、現場のエンジニアやCSのメンバーなど、みんながリサーチできることで文化を強くするよう牽引していってほしい。

CXO: takejune

事業を伸ばし続ける原動力として

スタートアップとして連続的な成長だけでなく、非連続に成長するためには新しいものを生み出す必要がある。ユーザーとの対話によって、それを高い確度で再現できるのがスマートバンクの強みだと思う。また事業が伸び悩んだときに価値を再定義し、再成長するための起点もユーザーリサーチだと思っている。

カルチャーをデザインする存在として

企業文化を言語化し、組織の設計を工夫し、仕組みをつくることで、ユーザーと対話する文化を組織全体に広げている。ユーザーとの対話によって、未解決の課題を解くサービスをデザインすること。そのために、全員でユーザーと向き合うカルチャーをデザインすること。それはきっとビジネスインパクトを生み出すだけでなくユーザーの生活を変え、社会を少しずつ変えていくことにつながる

伴走型リサーチの環境づくり

組織にリサーチを根付かせていく環境づくりや社内の巻き込みを大事にしています。

プロジェクト前にリサーチのタネを見つける

企画から関わることで、やらなくてよい(=ユーザーに価値を届けない)リサーチを生み出さない。そのため、プロジェクトに呼ばれなくても草の根活動的にリサーチの芽を探します。

リサーチャーが主体的にメンバーを巻き込んでいく

他職種のメンバーがユーザーに対する不透明感からくる不安を解消し、業務に集中してもらいたい。ユーザーに対する認識がリサーチャーと同期された状態を目指し、設計を共に行います。一つのインタビューごとにチームでアップデートする意識を持ちます。

リサーチデータの資産化・流通

過去のリサーチデータを誰もがアクセスできる場所に置き、いつでも閲覧できるようにしています。適切に活用されるため、必要なタイミングを見極めてリサーチャーから活用提案を行います。

💡社内コミュニケーションの工夫

点ではなく線、線のみならず面

ドキュメント(点)を作っただけではチームメンバーに届かない。リサーチャーは、どのように情報を社内に流通させるか(線)に頭を使う。どのタイミングで受け取れると良さそうか、いつ知っているとメンバーの仕事に役立ちそうか、メンバーの様子をよく観察する。そして、接点(面)を多く持てるよう頭を使う。

また、リサーチのタネをリサーチャー自身が拾えるよう、社内にアンテナを貼っておく。

メンバーのリサーチマインドを育てる

新入社員のオンボーディングにリサーチを活用することで、スマートバンクのカルチャー理解、サービス理解を下支えする。

各社員がユーザーについて自分の言葉で語れるよう、リサーチャーとして働きかける。

そのためにメンバーが気軽にリサーチャーに話しかけやすく、いつでもリサーチデータにアクセスできる環境を整える。

リサーチチームのミッション

ミッション

  • ユーザーの持つイシューを特定することで事業・プロダクト開発の起点となる
  • リサーチ結果を活用しやすい状態を保つことで意思決定の速度と精度を高める

リサーチチームの責任範囲

  • リサーチ設計・実査・分析・リサーチ実施要否判断
  • リサーチデータベース構築・整備
  • リサーチ活用アドバイス
  • リサーチの種をキャッチアップ

行動指針

💎 Think N1

ユーザーの持つイシューを特定することで事業・プロダクト開発の起点となる

💎 Super Ownership

ユーザー視点を提供し、メンバーを巻き込んでリサーチを組織に浸透させる

💎 Be Open

リサーチデータのアクセス性を高め、誰もがリサーチデータを活用できる状態にする

※行動指針は会社のValueに基づく

チームメンバー


Haroka
| UXリサーチャー

校正・校閲担当者を経て、ベンチャー企業で新規事業の立ち上げやインタビューの企画執筆を経験。その経験からUXリサーチャーに転身、人材会社の新規事業のUXリサーチやリサーチ組織立ち上げ、リサーチャー育成に携わる。 2022年4月より株式会社スマートバンクに1人目のUXリサーチャーとして入社。N1インタビューの文化を受け継ぎ、年間100件を超えるインタビューを担当。メンバー全員が「Think N1」を身近に感じられるような働きや経営・事業に伴走するリサーチを推進している。

ほか、Research Opsメンバー1名の3名体制

リサーチャーの働き方

プロダクト開発の初期工程から入る

リサーチフェーズだけでなく企画、要件定義、詳細設計、リリース後の検証や改善まで伴走します。

要件定義時は「Think N1シート」を通じて共通認識を持ち、次の工程に手渡します。

実装に携わるエンジニアが「なぜこの機能を作るのか」明確にわかるようにします。

リサーチが起点となる開発プロセス
Think N1シート(抜粋)
プロダクト開発におけるリサーチの種類(参考|グローバル企業のプロダクト開発最新トレンド)

主な業務範囲と分担

スマートバンクでは、職種横断でプロジェクトチームを組成します。

プロジェクトに紐づいてリサーチプロジェクトが発足しますが、基本的に、リサーチャー単独でリサーチは行わず、後工程で関わるメンバー(PM、デザイナー、エンジニア等)を交えたリサーチプロジェクトチームを組成し、設計フェーズから入ってもらいます。

分業化せず、リサーチャー主導のチーム戦で行う、フェーズによって関与度を調整するのが特徴です。

💡リサーチャーと協業したいと思ったら?

  • 小さな企画のタネ、ユーザーへの疑問が浮かんだらまず話しかけてください。何も固まっていない状態だとなお嬉しいです。 企画・疑問の場に立ち会えてこそ、リサーチャーが専門性を発揮します。
    • 話しかける時の例 「マイカードのユーザーってどんな人か過去データありますか?」 「調査リリースみたいなかたちで、物価高の時流に合わせてユーザーの家計管理の実態を出せたらいいなって思っているんですけど、相談に乗ってくれますか?」 リサーチャーの工数をかけるのは…と思わず、迷ったら今ある情報を全て共有していただくスタンスでぜひ会話してください!きっとお役に立てます。
  • 例えば、アンケート調査だとアンケート結果一覧のnotionに全てのデータを格納し、過去データから案内することもあります。また、ユーザーへのコミュニケーション頻度が適切になるようリサーチ側で配布先をコントロールするなど、設問設計以外でも全体的にフォローします。

他職種との協業事例

調査プロセス

🪜設計思想

「一緒にはしごを登っていくように、リサーチ設計・進行をアップデートする」

リサーチ設計:「調査を通して把握したいことは何か」

リサーチャーと同じ情報量で話せるように、設計から他職種を入れて進める。リサーチャーだけが調査を担うのではなく、チームとして調査に参加してもらうことで、リサーチとプロダクト開発の分断を防ぎ、スムーズにリサーチ結果を手渡せるようにする。

リサーチ進行:「把握したいことを共通認識にできているか」

気づきの同期を目的としたコミュニケーション。インタビュー全件終わってから分析に着手せず、実査に同席し、気づきを会話するサイクルを細かく回すことで速度を出しながら共通認識を持つ。設計時の想定や質問内容なども見直し、さながらはしごを一段ずつ登っていくようにチームでアップデートさせる。

調査プロセス一覧

主な実施内容

ツール

  1. 情報収集
  • プロジェクトのmtgに参加
  • 議事録を定期的にチェック
  • slackの全プロジェクトに参加
  • slack ・Twitter(X) ・Web検索
  1. 設計
  • 調査設計
  • 対象者選定
  • インタビューガイドの作成
  • 書記シートの作成
  • notion
  1. 実査
  • インタビュー調査
  • 広報向けインタビュー
  • ユーザビリティテスト
  • アンケート調査
  • マーケティング調査
  • notion(書記シート)
  • Zoom
  • Figma / Figjam
  1. 分析
  • 発言の切片化
  • 課題仮説の検証および更新、洞察
  • Figjam
  • notion(Think N1シート)
  1. 共有
  • 速報レポート
  • 調査まとめ
  • slack
  • notion
  • Figma / Figjam

調査手法

SmartBankで用いる代表的な調査手法を紹介します。全体像をつかむ際にお役立てください。

  • アンケート調査
  • インタビュー調査
  • ユーザビリティテスト

※調査目的、調査期間等に応じてリサーチャーが調査手法を選定します。

アンケート調査

🚶調査の流れ

インタビュー調査

事業のあらゆるフェーズで汎用的に行われるインタビュー調査ですが、本項では【課題・価値定義】フェーズの流れを取り扱います。

🚶新しい事業領域を見極める上での調査の流れ

👀課題・価値定義フェーズで明らかにしたいこと

1が明らかになり、詳細に語れたり、追加で知りたいことが出たら2に進みます。

関連ブログ

ユーザビリティテスト

📱使い勝手を保証するための調査の流れ(実機テスト/対面実施の場合)

リサーチ活動を広める

広報部門との連携で調査リリースを掲出する、「Think N1」の体現者として広報活動をするなど、より多くの方にスマートバンクのリサーチについて知っていただく取り組みに力を入れています。

取材、登壇事例

おわりに

お読みいただきありがとうございました!

これまで事業の成長に合わせて、リサーチ環境を整備してきましたが、まだまだ道半ばです。

リサーチチームでは、「スマートバンクがリサーチで大事にしていること」に強く共感し、共にリサーチが根付いた強固な組織作りを推し進めていきたいあらゆる職種のメンバーと出会いたいと考えています。

未来のリサーチチーム

プロダクト開発のみならず、マーケティングや経営にも伴走できるような振る舞いを強固にしていきたいです。

以下は、現在仕掛かり中のもので、共にチームで作り上げていきたいと考えます。

  • 定量的な視点から、事業・経営に示唆を提案できる/定性調査の質をさらに向上させる
  • 他職種メンバーのリサーチ関与度を増やすための環境整備をする
  • まだ見ぬユーザー層を開拓し、新しい事業を生み出す起点となったり、マーケターと協業して新しい価値を届けられるようサポートする

カジュアル面談

どの職種の方でも、リサーチチームと協業し、事業に資するリサーチを推し進めたいとお考えの方はカジュアル面談でお気軽にお知らせください。

登壇・取材・執筆依頼など

そのほか登壇や取材、執筆のご依頼がありましたら、uxresearch@smartbank.co.jp までご相談ください。

人々が本当に欲しかったものをつくる。
その想いに共感できる仲間を求めています。

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