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シリアルCEO Voice〜1回目の起業から学んだ“事業成長の型”とは〜【書き起こしつき】

今回のSmartBank.fmは、シリアルCEOのshotaさんに話を聞く「シリアルCEO Voice」連載の1回目です。「1回目の起業から学んだ“事業作りの型”」をテーマに、shotaさんの視点をお届けします。起業家やスタートアップで働く人のお役に立てたら嬉しいです。

書き起こし

オープニング

chika: こんにちは。SmartBank.fmは、家計簿プリカ「B/43」を運営するスマートバンクのメンバーにカジュアルに話を聞いていくポッドキャスト番組です。

今回は、シリアルCEO Voiceという新しい連載として、私、広報のchikaがシリアルアントレプレナーのshotaさんに話を伺っていきたいと思います。

shota: よろしくお願いいたします。

chika: SmartBank.fmは、もともと採用候補者の方にカジュアルに社内のことを知ってもらうようなお話が多かったのですが、経営陣がシリアルアントレプレナーであるという当社の強みを活かして、経営者の方やスタートアップで働いている方に役立つようなお話も発信していけたらと思って新しい連載をスタートしました。shotaさんからもぜひ意気込みをお聞かせいただけたらと思います。

shota: そうですね。起業家が集まるイベントに呼んでいただいてパネルディスカッションしたり、エンジェル投資をする中で、「どうやって事業選びをしているのか」「プロダクトをPMFさせるのにどういうことを意識しているか」といったことを質問いただくことが多かったので、自分がノウハウとして答えられるところをお話ししていけたらと思います。

シリアルアントレプレナーのメリット・デメリット

chika: 今回は「1回目の起業から学んだ事業づくり」をテーマに聞いていきたいと思います。まず、シリアルアントレプレンナーとして2回目の起業になりますが、2回目だからこそ有利な部分や逆にそうじゃない部分はどういうところにあるのでしょうか?

shota: 1回目に起業した時は、フリマアプリの事業をやっていて、当時シリアルアントレプレナーだった山田さんが率いるメルカリと競合していました。1回目はシリアルと戦って、2回目は自分がシリアルになった、ということであらためて思うところがあるとすると、やっぱり起業した瞬間はヒト・モノ・カネが大事です。その中でも、人の部分と、最初にプロダクトをつくる時のお金をどう調達するかがすごく重要だと思います。

shota: シリアルの良いところは、前回なんらかの形である程度成功しているので、そのときに支えてくださった方の信頼残高があることです。わかりやすい例で言うと、VCの方に投資していただいて、ある程度大きな資金をお返しできたという信頼ですね。なので、お金に関しては、まだ動くものがなかったりプロダクトの価値が検証されていない状況だったりしても、大きなバリエーションをつけてもらってガッツリ資金調達できるみたいなことは結構あるかなと思っています。自分の周りでも、プロダクトがまだない状態で大きく調達する人が結構多かった気がしますね。お金のところは、過去の信頼残高をフックになんとかできるというのがあります。

shota: 人の話でいうと、SmartBankが創業して最初の頃に集まってくれたメンバーは、過去に起業していたとき一緒に働いてくれていた腕利きのメンバーでした。前職で長い間働いていて、実績もしっかり分かっていて、かつ自分たちがプロダクトをつくるスタイルにも共感が高い人たちが来てくれたのが大きかったです。プロダクトをつくった実績のない人が人を集めたいと思ったときに、優秀な人をたくさん取るのは難しいと思うんですけど、うちの場合は 過去に働いてた人がまた仲間になってくれたので、人のところはそれでクリアできたのが大きかったです。

shota: どのシリアルでもこの2つは共通するポイントかなと思います。

chika: ありがとうございます。逆に、2回目だけど有利ではない部分はどういうところにありますか?

shota: そうですね。どのシリアルも、前回やっていた事業とまったく同じことは多分やらないと思うので、新しい事業が成功するための勝ち筋だったり、その事業の構造やルール、伸ばし方はゼロからアンラーニングして一から学び直す必要があります。新しい領域の学習コストが必要なのはありますね。

勝てる市場の選び方

chika: まさに弊社でいうと、フリマアプリという事業から、まったく領域が違うフィンテックの事業にチャレンジしてるっていうのがいまのフェーズになると思います。そういう中で、今回「事業づくり」をテーマにお話ししたいと思っているのですが、まず、市場の選び方について意識していることや見極めのポイントについて教えてください。

shota: そうですね。事業をつくる時に個人的に見ているポイントが大きく3つあります。

shota: 1つ目は、僕がコンシューマー向けのプロダクトをつくることが多いからっていうのもあるんですけど、事業をつくる時にN1のインタビューを深掘って、特定の状況で発生する特別な課題を解決することにフォーカスしていることが多いですね。 この「イシューから始める」みたいなところは強く意識しています。

shota: 過去に僕がプロダクトをつくっていたときって、自分の妄想ベースでつくることが結構多くて。海外でこれが流行っているとか、こういう課題があるだろうみたいな思い込みでつくることが多かったんですけど、思い込みでつくったら誰にも使われないプロダクトができてしまった、みたいな経験があったんです。なので、フリマアプリのときはユーザーインタビューをしっかりして、 「女子大生の方がブログやmixiで服を売っている」という特別なインサイトに気付いて。ブログで服を売るって、めちゃくちゃ不便な行為だったりするので、それをうまく解決できるプロダクトを作ったらすごく使われたっていうのが成功体験の一つだったりします。今回はフィンテックという違う市場でプロダクトをつくっていますが、プロダクトをつくるときは「イシューから始める」を意識してやっています。

chika: フィンテックという領域でも、ユーザーさんのインタビューを重ね、イシューを見つけて、その上でB/43のプロダクトをつくってきたというところが、2回目の起業でも活かしている型なんですね。

shota: そうですね。客観的に見て明らかに不合理な問題解決方法をしているなって思うことが、高頻度で発生しているものを見つけると、僕はテンションが上がります。事業の種自体は、そういうイシューがあるかどうかを見て始めることが多いですかね。

chika: ありがとうございます。

shota: 2つ目は、どっちかというとこっちのほうが重要なのかなと思うんですけど、事業ってやっぱり始めるタイミングが重要だなと思っています。タイミングって難しいポイントだと思うんですけど、僕はよく「上りのエスカレーターに乗れる事業か」を見ることが多いです。上りのエスカレーターってなんぞやって感じなんですけど、広くいうと、マクロ的な環境変化だったり、特別な技術の普及だったり。うちに関連するポイントでいうと、いままでできなかったことができるようになる法改正とかが大きいポイントかなと思います。事業って、何かの環境変化によって伸びるタイミングにうまく張れるかがポイントで、「何の変化に賭けていますか、あなたは?」みたいな問いなのかなと思っています。

shota: フリマアプリの時はたまたまだったんですが、ちょうどスマホが普及するタイミングで長期に張れたというのがあります。モノを売る行為って、昔はPCを持ってないとできなかったり、ガラケーでもパケホーダイに入っていてインターネットをバリバリに使えたりする人でなければできなかったと思います。それが、スマホの普及で誰もがインターネットに接続できるようになりました。写真を撮るだけで簡単にモノが売れるようになったのはスマホの普及がポイントだった気がするので、そういった変化にうまくハマれて伸びたのが結構大きかったです。プロモーションするだけで勝手に伸びたので、特別なことをしたりとかもあんまりなかった。 そういう上ってるエスカレーターに乗れるかがポイントかなと思ってますね。

chika: ちなみに、そういった上りのエスカレーターかどうかを見極めるスキルってあったりするんですか?

shota: さっき言ったような、「解決すべきイシューがないかどうか?」はライフワーク的に常に探していたりするので、いくつかストックがあるんですけど、それを事業としてやってみようかというところは「体感できるかどうか」というのも結構重要な気がしますね。

shota: 今回はカード決済の領域でチャレンジしてるんですけど、今の事業にベットしようと思ったとき、日本がこれから必ずキャッシュレス化するだろうなっていうのはなんとなく分かっていて。僕らが事業参入するとき、日本のキャッシュレス比率が 10%以下だったのが、3〜4年で30%くらいまで普及しているんです。国がキャッシュレスを推進しているので、日本は必ずキャッシュレス化が進むだろうというのがありました。あと、我々は今回、資金移動業っていう金融のライセンスを取得して事業をやっているんですけど、その資金移動業っていう免許の法改正がされて、今までできなかったことができるようになりました。最近だと、デジタル給与とかがこれから成立するだろうな、みたいなのもあります。この2つは調べられる範囲で調べていました。

shota: あと、この事業を始める前に、キャッシュレスがめちゃくちゃ普及してる国はどういう状況で、どういう課題があって、どういう問題解決のプロダクトがあるのかっていうのを見たいなと思って、3か月間ぐらいイギリスに行ってきたんです。イギリスはキャッシュレス比率が8割を超えていて、日本と比較しても、国民の数、経済規模、島国と、そこまで大きな違いがなかったんで、ちょっとした未来を見てくるというか、「日本のキャッシュレス化が進んだ未来を体感してみよう」ってなったときにちょうどよかった。公共交通機関がクレジットカードやデビットカードで乗れて、不便だった問題はこういうプロダクトが解決している、みたいなお手本に近いものが学びとして得られたので、そういうフィールドワークを通して学んできたというのもありますかね。

chika: ありがとうございます。変化を見極めるだけじゃなくて「体感する」というのもポイントなんですね。3つ目はどうでしょうか?

shota: これは全部の事業には当てはまらない気がするんですけど、フリマアプリで起業した時って、 競合の参入数がすごかったんですよね。上場企業含めて、ピークだと20社くらいがフリマアプリを出していました。その領域では、日本で最初に自分たちがヒット商品というか、いちばんユーザーに使われて伸びの顕著なプロダクトを作っていたんですが、インターネット上のプロダクトでパクれないものは基本的にない気がしています。基本的なUIはパクれちゃうし、最終的に参入障壁になりづらい。なので、最終的にはパクられちゃうかもしれないけど、できるかぎり模倣が難しいプロダクトとか、模倣するまでにかなり時間が稼げるプロダクトにしたいと思っていました。つまり、エントリーバリアが高い事業にするというのが3つ目のポイントですね。ここに関しては、シリアルは前半で話したヒト・カネみたいなところで最初からブーストをかけられたりするので、そういった強みを活かすためにもエントリーバリアが築ける事業に入りたいなと思ったって感じですかね。

shota: フリマアプリのときは、基本的にはアプリのUIをパクればクローンのアプリをつくれましたが、フィンテックは参入して事業を始めるのにまずライセンスを取る必要があるんです。それと、今回やっているカード決済とアプリの事業では、カードを発行したりカードで決済したり、そういうカード決済の裏側ですね。うちはVisaのカードを発行しているんですけど、Visaのネットワークと接続して、決済でいうプロセシングのような裏側の仕組みまで作ったので、フロントだけ真似してもできない事業というところで、エントリーバリアとしてそこが強く働けばいいな、と思って選んだのもあります。

chika: ありがとうございます。ちなみに、エントリーバリアが高いと、時間がかかったり参入する難しさみたいなところもあると思うんですけど、そこをあえて選ぶ意思決定をした背景を教えていただけますか?

shota: そうですね。さっき言ったことと重複しちゃうんですけど、やっぱり、お金のある・なしで、エントリーバリアを築ける時間が結構変わってくると思っていて。シリアルって、さっき言ったように最初から期待値で大きく資金調達ができたりするし、言い換えると自己資本でなんとか耐えられたりするところが大きかったりするので。メルカリのときがそうなんですけど、ベンチャーでいちばん怖いのって、自分たちと同じようなスタートアップとバチバチの戦闘になって競り負けるっていうのが、いちばん嫌な展開というか、僕らがやられていちばん嫌な展開だったので、新しいスタートアップが出てきたときに兵站の勝負で負けないみたいなところが重要だったりするかなと思いました。

事業を伸ばすポイント

chika: ここまでで市場の選び方について聞いてきたんですけれども、その事業をどう伸ばしていくかってところを次から聞いていきたいと思います。 1回目のフリマアプリの事業を伸ばす上での経験や、そこでの失敗から学んだ部分と、2回目の起業で特に意識しているところを教えていただけますか。

shota: そうですね。前回の起業でいちばんの失敗だったと思うのは、戦っている市場の「ゲームのルール」をちゃんと把握していなかったことです。そこの解像度の低さや打ち手の手数で勝負がついちゃったな、っていうのは大きい反省としてありますね。

shota: これは持論になるんですけど、C向けのプロダクトって、ひとたび人気がつくと新規参入がドッと始まります。プロダクトの数が少ないときは、ユーザーもプロダクトの機能の利便性で判断して手に取って使ってくれるんですけど、新規参入が始まって同じようなプロダクトが溢れてくると、どれを使っても結局ユーザーの価値体験はあまり変わらないよね、となります。そうすると、プロダクトを選ぶ理由が、そのサービスを使うとほかのサービスより経済合理性が強く働くか、もしくはその業界の中で認知度がいちばん大きいか、になります。前者でいうと、手数料がダタとかポイントのキャッシュバックがあるとか。後者だと、CMがよく放送されているとか。そういう勝負に移ってくるので、C向けのお作法でいうと、前半ではエッジのとがった機能の利便性が高いものをつくって、後半は経済合理性を生み出すか認知度で勝つということになってきます。前半は、開発力や創業者の創発的なアイデアで勝負できますが、後半は、人と金でどれだけ殴れるかの勝負です。特に経済合理性や認知度は、お金の殴り合いで勝てるかどうかの勝負ですよね。開発力がめちゃくちゃ高いとか、ユーザーニーズを汲み取っているとか、開発のスピードが速いとかもすごく重要なんですけど、 最後は「金をどれだけ持てるか」というシンプルな戦いになるので、「資金調達がうまい会社が勝つ」というのは、C向けのルールとしてあるかなと思っています。

shota: 事業の話でいうと、フリマアプリって「Winner takes all.」の市場というか、やっぱりマーケットプレイスの事業なので、売り買いされる規模の数がゲームの勝負に直結するというのもあって、とにかくユーザーを増やすことが重要だったりするんですけど、その構造をちゃんと把握できていなくて、ユーザーにとって利便性の高いプロダクトさえつくっていれば勝てるだろうと思って戦ってたんです。コモディティ化が始まって、最後は金の殴り合いになるというところが理解できていなかったので、プロダクトをめちゃくちゃ磨きにいってたんですけど、実は売り手の数を最大限伸ばすのが重要なゲームで、お金を大量に集めるほうが重要だった。そういう構造をちゃんと理解した上で勝負することが大事ですね。

shota: 参入する前にそれを理解するのは難しいと思うので、「いま戦ってるゲームの構造ってどうなってるんだっけ?」みたいなものを、その事業にエントリーしながら学んでいく必要があるし、それをしっかり認識して資源を投下していかないと、と思ったりしましたね。

chika: 前半と後半で戦い方やルールが変わるということなんですけど、その境目ってどういうふうに判断するんでしょうか?

shota: うわ、結構難しい……(笑) 僕は、たとえば大企業が自分たちの市場に参入してきてもそんなに怖くないと思っているんです。どっちかというと、自分たちと同じようなスタートアップがこの市場に参入してくるほうが怖い。それは、さっき言ったような金の殴り合いみたいな戦いにシフトしたときに、上場企業ってIRの関係でどうしても予算みたいなものがあるし、「この1年は、このプロダクトに10億赤字を出します」とかの意思決定はIR的に大ダメージを追いかねなかったりすると思います。でも、スタートアップは資金調達さえできれば「この1、2年で、10億、20億突っ込みます」みたいな意思決定ができちゃうので、自分たちと同じようなスタートアップが参入してきているかは見極めるバロメーターになるし、いちばん顕著なものだと、資金調達の金額規模はやっぱり参考になりますね。調達が完了したかどうかは事後確認しかできなかったりするので完全には把握できないですけど、競合相手の戦力の把握とか、シリアルとかだったら特に分かりやすいので、場合によってはもう勝負から降りたほうがいいっていう可能性もあるかもしれないですけど、相手の経営者の戦力みたいなところも多少はバロメーターになるんじゃないかなって気はしますね。

SmartBankが向き合う市場と勝ち筋

chika: ゲームのルールを把握することが大事という中で、あらためてB/43が向き合う市場のゲームのルールだったり、その上での勝ち筋をどう考えているかっていうところもお伺いしたいなと思います。

shota: はい、あんまり言いたくないんですけど(笑)

chika: はい、あの、言える範囲で(笑)

shota: 「B/43」は家計管理のプロダクトで、特に「家計を共有する」みたいな文脈でよく使っていただいています。主力サービスは、同棲しているカップルやご夫婦が共有口座をつくって、家計管理できるカードがそれぞれ1枚ずつもらえる「ペアカード」と、親が子供に発行できる「ジュニアカード」っていうサービスを展開している感じですね。2つとも、無消費を開拓できているというか、いままで既存の銀行が提供できてなかったサービスだったり、アナログな方法で管理されてたことだったりしたので、いままでにない価値提案ができて、そのプロダクトを提供できている会社がうちしかないので使い続けてくれてるのかなって思ったりするので、スタートラインとしては結構良かったなと思ってます。

shota: 勝ち筋みたいなところに触れると、前のフリマアプリがマーケットプレイスの事業で、売り手と買い手の規模を追求するゲームだった話と似てるんですけど、いま我々がチャレンジしている家計を共有するプロダクトも、基本的には「Winner takes all.」の構造に近いと思っています。どういうことかというと、そもそも家計管理のプロダクトって、市場に複数のサービスがあったとしても、全部使ったり3個同時に使ったりするのがあり得ないかなと思っていて。 フリマアプリは、一番手、二番手くらいであればユーザーが使い分けることもあったと思うんですけど、家計管理のプロダクトを複数使ったり、うちでいうペアカードやジュニアカードのような商品を複数使うのってかなり考えにくいモデルなので、基本的には一社しか勝たないモデルかなって気はしていますね。

shota: かつ、誰かと共有口座をつくるプロセスがプロダクトの中にあって、そこがはっきりとした強みだったりもするので、基本的には先行逃げ切りというか、先にうちの口座を開けてもらってカードを使ってもらうっていうのが重要なポイントかなと思います。なので、早めに認知を取ったり、これからの共働き世帯などに早く展開して、競合相手をブロックすることが重要かなと思っていて、そこは意識してますね。家族にフォーカスして始めているのも、共有口座を作ってもらう意味もあるし、1回作ってもらえたらスイッチする理由が生まれにくいものかなとも思ったりするので、そういう強い部分から始めて、この1、2年でそれらを強化する戦略をとっているのもポイントの一つだったりします。

chika: いまのフェーズとしては、ニッチで利便性の高い優れたサービスも提供しつつ、このゲームのルールを見据えて認知はどんどん拡大していこうみたいなところになっているのかな、と。

shota: そうですね。経済合理性か認知度かでいちばん強く出る、みたいなところをどうにかつくり出す必要があるな、と。くどいようなんですけど、お金の殴り合いに備えるという話でいうと、同じようなプロダクトを提供する競合が出てきた時に、どっちの応援団が強いかという戦いなんです。つまり、バックについてくださっている投資家さんの数や、大きいVCさんがいかに支えてくれるかの勝負になるので、「強い応援団をつくる」という意識のもとで株主さんの母集団形成ができているかが重要な気がしますね。シンプルにいうと、大きいファンドのVCさんを競争相手に取られないことが大事です。 基本的にVCさんは、同じような競合に複数並行して出資はされないし、起業家も嫌がるんで、最初に出資したほうを強く支えるポジションをとられることがほとんどだと思っていて。たとえば、フリルvsメルカリのときでいうと、いまうちに投資していただいてるグローバル・ブレインさんやグロービス・キャピタル・パートナーズさんは国内でもトップクラスのVCさんですが、皆さんメルカリに陣営に立たれていて、僕らが募集してくださいと言ったときにはもうメルカリに投資している状態だったんです。なので今回は、最初に大きいVCさんに応援団として入ってもらうみたいなところを意識して資本政策を組んでいたりするので、勝ち筋でいうと、後半戦は前もって応援団を大きくつくる動きをするみたいなところですかね。

chika: ありがとうございます。B/43のゲームのルールや勝ち筋が見えてきました。 さらにお話しできる範囲で、具体的にどういうふうにサービス伸ばしていくかみたいなところも聞きたいなと思うのですが、いかがでしょうか?

shota: そうですね。B/43って、今は世間的には少なからずニッチな印象を持たれるケースが多いかなと思っています。家計管理のサービスで、個人でもペアでも使えて、お子さんにも発行できるカードと家計管理を組み合わせたサービスなんですけど、家計管理の価値提供に閉じてるようなところは印象として強く受けると思うので、 ニッチなサービスで終わるんじゃないかと思われるケースも多いんですけど、僕は家計管理だけで終わる気は全然なくて。B/43はお金の問題をどんどん解決していけるサービスだと思っています。今はお金の管理からスタートしているんですけど、中長期的には、お金を貯めたり増やしたり、家計管理だけじゃなくて資産管理、資産運用みたいなプロダクトに進化する余地があると思っているので、家計管理だけじゃなくて、徐々に資産というかB/Sまで管理したり、増やすところの機能を追加していきたいなと思ってはいます。

shota: 僕らはフィンテックの事業を始めてまだ今年で4年目なので大それたことは言えないんですが、フィンテックの事業って、特にコンシューマ向けは、TAMを作りやすい構造なんじゃないかなって勝手に思っています。どういうことかというと、フリマアプリをやっていた時は、売り買いする規模をどんどん大きくしていくしかなかったというか、最初は女性向けの服を売るマーケットプレイスから始めて、男性もできるようにしたり、エンタメの商品を取り扱えるようにしたり、転売ヤーの方が使ってくれたりとか、売り買いする機能は変わらず、使われる人とモノが増えてTAMが大きくなった形でした。今はメルカリさんでいうとメルペイとか、僕がやってたときは楽天ペイみたいに、決済につなげる形で大きいTAMをつくれたりもするんですけど、フィンテックの事業はTAMを作る上で、ユーザーに積み重ねがしてきやすいなと思っているんです。

shota: ユーザーのお金の問題って結構たくさんあるし、お金の心配事は多分尽きないと思うんで、いまある機能の利便性で手に取ってもらって、そのプロダクトを使い続けてくれた時に、たとえば、お金が足りないみたいな心配があれば、将来的な健康やお金の問題に関して、保険に入って手当てしたいとか、投資の商品を使ってお金を増やしたいとか、アップセルしやすい商材が、コモディティにはなるかもしれないけど結構あったりするので、ユーザーに機能を気に入って使ってもらって、どんどん追加提案をしていって、それによるTAMみたいなのは作りやすいんじゃないかなと思っています。

chika: ありがたいことにB/43ペアカードもファンになってくれるユーザーさんがかなり多いと思うので、そういったユーザーさんたちに、今後もほかの領域でお金の課題を解決するようなところを提供していけたら良いのかなと。

shota: そうですね。まさに同棲しているカップルの方で、これからご結婚される方が増えたりとか、結婚しているご夫婦の方であればお子さんが生まれたり、 引っ越したり、家買ったりとかもあると思うので、やるかどうかは別として住宅ローンとかそういうところもできると思いますし、お子さん生まれたらジュニアカードを使ってもらって、そのお子さんに対して今度はクレジットカードを発行してあげるとかね。

toC市場を選ぶ理由

chika: ありがとうございます。ここまで2回目の起業として、特にコンシューマー向けの事業づくりの型や、事業を伸ばす上でのポイントをいろいろと伺ってきました。最後にあらためて、こういったC向けの市場を選んでいる理由やこだわりについてお話を聞きたいなと思うんですが、いかがでしょうか?

shota: そうですね。2回目だからっていうのはあると思うんですけど、シリアルの起業家と話すと、やっぱり次の起業のテーマ選びって結構難しいんです。なぜなら、前回成功したチャレンジより大きい成功をしたいなって思う人がやっぱり多いので、市場選択する時に、前回の市場を超えられるかが結構迷いポイントかなと思っていて。自分の場合はそれがフリマアプリなんで、超えるのが相当難しいというのはあります。 客観的に振り返って、フリマアプリって、自分で言うとちょっとあれなんですけど10年に1度の発明だったなと思ってて。それはメルカリの時価総額とかが物語ってると思うんですけど、フリマアプリって、無消費をめちゃくちゃ開拓できたサービスだなと思っているんです。 無消費っていうのは、特別なスキルを持ってるとか、お金をたくさん持ってるとか、特別なものを持っている人しか解決できなかったことが、そのプロダクトが発明されたことで、どんな人でも課題が解決できる。言い換えると、そのプロダクトができたおかげで、伸びしろがすごく大きくなる、みたいなものですが、フリマアプリはスマホさえ持っていれば誰でも簡単に物を売れるようになった発明だったなと思っていて。 フリマアプリって発明されて10年ぐらい経つと思いますが、あるプロダクトがユーザーの習慣を変えて、文化を変えて、それが構造的には社会を変えるみたいな部分がフリマアプリにはあったと思うし、良い悪いはあると思うんですけど、誰でもいらなくなったモノが簡単に売れるようになって、循環的な社会みたいなものができるようになったし、誰でもお金を稼げるような社会を作ったみたいなのも大きいポイントなので、自分の作ったプロダクトがたくさんの人に使われて、できる限りいい方面で社会を変えていけるようになったらすごく嬉しいなと思います。 今のB/43も、 過去に作ったフリマアプリを超えるような、社会を変えるインパクトをもたらせると思っていますし、起業家個人としては、C向けにこだわり続けて、その再現性にもう1回チャレンジしたいなと思ってます。

エンディング

chika: ありがとうございます。ぜひコンシューマ向けの事業作りに挑戦している起業家の方とか、そういったところで働いている方からも感想をいただいたりしながら我々も頑張っていけたらなと思います。

shota: そうですね。僕は起業家の事業の張り方とかC向けのプロダクトの話するの好きなんで、こういう輪が広がっていけばすごくいいなと思います。

chika: まだまだお話ししたいところですが今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。 今日はシリアルCEO Voiceの1回目として「事業づくりの型」をテーマにお届けしました。 shotaさん、今日はお話してみていかがでしたか?

shota: あらためてこの辺の話をすると自分の思考も整理された気がして、自分の原点に立ち返るような感じだったので、またモチベーション高くやっていこうと思いましたね。

chika: ありがとうございます。今回は、事業づくりの型という話だったんですけれども、2回目の起業だからこそ取り組んでいる組織づくりの話だったり、権限委譲だったり、社員の働き方みたいなところも色々こだわりはあると思うので、 またいろんなテーマでお届けしたいなと思っています。参考になったり何か気づきがありましたら、Xでもぜひ感想をシェアいただけると嬉しいなと思っているのと、聞きたいこととかがあったら、ぜひお気軽にリクエストもお待ちしています。

それではまた次回のSmartBank.fmも楽しみにしていてください。shotaさん、ありがとうございました。

shota: ありがとうございました。

人々が本当に欲しかったものをつくる。
その想いに共感できる仲間を求めています。

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